ニューロモデユレーションセンターの構築と医療連携
研究代表者:日本大学医学部脳神経外科学系応用システム神経科学分野
教授 山本隆充
慢性植込み型脳脊髄刺激装置、植込み型髄腔内薬液注入ポンプ、高頻度経頭蓋磁気刺激装置などを用いたニューロモデユレーション技術が、難治性疼痛、不随意運動、運動麻痺、意識障害、痙縮、癲癇、排尿障害などの治療に臨床応用されている。本研究では、これまでに本学で蓄積したニューロモデユレーションの技術を基にして、脳神経外科学系応用システム神経科学分野、脳神経外科学系神経外科学分野、神経内科学分野、麻酔学分野(ペインクリニック)、整形外科学分野(リハビリテーション)、精神医学分野、泌尿器科学分野などの研究者が連携してニューロモデユレーションセンターを構築し、新たな脳脊髄機能制御・再建のための研究拠点を構築するとともに、新たなニューロモデユレーション技術を社会に役立てることを目的としている。
これまで主任研究者らは、神経障害性疼痛(視床痛、延髄痛、末梢神経障害後疼痛)、運動障害(不随意運動、運動麻痺、固痙縮)、遷延性意識障害などを、大脳皮質運動野刺激 (MCS)、脳深部刺激(DBS)、脊髄刺激 (Dual-lead SCS) などの脳脊髄刺激療法によって制御ならびに回復させることが可能であることを報告してきた。また、本邦で最初の脳深部刺激術に参加し、これを保険適応とするまで導いた。さらに、毎週のように脳脊髄刺激療法の見学者を受け入れるとともに、他大学の研究者に対して脳脊髄刺激療法研修プログラムを開設し、6-12ヶ月の研修者を全国に公募し、これまでに多くの研究者が研修を終了している。
<研究テーマ>
- 1)難治性疼痛:ドラッグチャレンジテストの結果に基づいた脳脊髄刺激療法によって、難治性疼痛の新たな治療法を開発する。
- 2)不随意運動:パーキンソン病、ジストニア、各種振戦に対する、最適の脳深部刺激療法を確立する。また、術中の神経活動記録から、不随意運動発現のメカニズムについて検討する。
- 3)運動麻痺:脳卒中後疼痛に、大脳皮質運動野刺激または脊髄刺激を施行し、除痛効果のみならず運動機能回復にも有効な治療法を開発する。
- 4)オンデマンド型刺激装置の開発:脳脊髄刺激装置が、刺激を必要とするときだけONとなり、刺激を必要としないときにはOFFとなるシステムを開発し、その有用性を検証する。
- 5)小動物用の慢性植え込み型脳脊髄刺激装置:小動物用の慢性脳脊髄刺激装置を開発する。
- 6)排尿障害:脳深部刺激ならびに仙骨部磁気刺激による排尿機能の回復。
- 7)経頭蓋磁気刺激治療:経頭蓋磁気刺激を用いた疼痛、運動麻痺、不随意運動、排尿障害などの治療
- 8)髄腔内薬物注入:薬液注入ポンプとバクロフェンを用いた痙縮の治療。
- 9)癲癇、痴呆、精神疾患:癲癇、痴呆、精神疾患に対する脳脊髄刺激療法において、倫理的問題を解決し、実用化についての検討を開始する。
- 10)産学連携:脳機能障害の制御・再建のための電子機器の開発について、これに関連する多くの企業との産学連携を推進する。
参加者
- 日本大学医学部脳神経外科学系応用システム神経科学分野
教授 山本隆充(研究代表者)、准教授 深谷 親 - 日本大学医学部脳神経外科学系神経外科学分野
教授 吉野篤諸、准教授 大島秀規、小林一太、助教 加納利一、大渕敏樹 - 日本大学医学部神経内科学分野
教授 亀井 聡 - 日本大学医学部整形外科学分野
教授 徳橋泰明、准教授 吉田行弘 - 日本大学医学部泌尿器学分野
教授 高橋 悟 - 日本大学医学部精神神経学分野
教授 内山 真 - 日本大学工学部
教授 酒谷 薫 - 日本大学医学部麻酔学分野
准教授 加藤 実 - 日本大学医学部生物学分野
准教授 山下晶子 - ソウル大学工学部
教授 Sung June Kim